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2007年7月17日(火) ノボテルがレディボーイに謝罪

 ノボテルと言えば、世界中で事業を展開しているフランスに本社を置くAccor社の所有する高級ホテルです。貧乏な私は、利用することを考えたことすらありませんが、タイに観光やビジネスに来るお金持ちにとっては、サイアムスクエアにあるノボテル・バンコクはかなり有名なホテルです。

 そのノボテル・バンコクに「CM2」という名のナイトクラブがあるのですが、事件はそのクラブで起こりました。

 7月5日のバンコクポストによりますと、6月22日、ひとりのレディボーイ(transvestite、タイ語ではカトゥーイ、日本風に言えばニューハーフ)がCM2への入店を拒否されたことが問題となり、いくつかの団体がノボテル・バンコクに抗議をおこないました。

 さらに、抗議運動は世界中に広まり、100以上の同性愛関連の団体が世界中のノボテルやAccor社の所有する施設の利用をボイコットするに至りました。

 これらの抗議に対し、ノボテル・バンコクは記者会見をおこない、正式に入店を断られたこのレディボーイに謝罪をおこないました。

 被害者のレディボーイのスチラット(Suttirat)さんは、同ホテルの謝罪を受け入れ、ボイコット運動をおこなっている世界中の団体に対して抗議を中止するよう求めています。彼女は次のようにコメントしています。

 「あたしは謝罪を受け入れることにしたの。過去は過去だもの。そのうちノボテルに遊びにいくわよ・・・」

 タイは同性愛者に世界一寛容だと言われており、実際、最近改正された憲法では、「3番目の性」として新しい章がもうけられています。これにより、同性愛者たちは憲法で人権が保障されたことになります。

 Bangkok Rainbow Organizationという同性愛者擁護団体があり、この団体もノボテル・バンコクの事件に対して、ウエブサイトを使って同ホテルのボイコット運動を展開していました。この団体の代表者のナットエー(Natee)さんはバンコクポストの取材に対し、次のように答えています。

 「明日、私は100人の同性愛者の友達をつれて憲法改正委員会に伺う予定なの。プレゼントの花束も準備しているのよ」

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 同性愛者の差別に対して社会運動が起こり、ホテル側は2週間後に謝罪をおこない、憲法では同性愛者の人権がしっかりと規定されている・・・。

 こう考えると、タイとはなんと進んだ魅力的な国なのでしょう。ストレートの私でさえ拍手喝采を贈りたくなってきます。

 しかし、その世界一進んだタイでさえも、現実にはまだまだ差別が存在することは忘れてはいけません。

(谷口 恭)

参考:GINAと共に 2007年6月号「レディボーイの苦悩」