HIV/AIDS関連情報

2007年4月30日(月) リビアのHIV院内感染、真実の行方は(第6報)

 過去5回にわたりお伝えしてきましたリビアのHIV院内感染の事件ですが、ここにきて状況が変わりつつあります。

 まずはこれまでの経緯をまとめておきましょう。

・1990年代、リビア内の病院で426人の子供たちがHIVに院内感染するという事件が起こった。
・5人のブルガリア人の看護師と1人のパレスチナ人の医師が、故意にHIVを院内感染させたとして逮捕され1999年から拘留されている。
・しかし、その根拠はまったくデタラメなもので、世界各地の政治家、科学者や科学誌などが、リビア政府の不当な拘留に抗議をおこなっている。
・リビア政府はこれを聞き入れず、感染した子供の家庭への補償金として、1家族あたり約15億円の補償金をブルガリア政府に求めている。
・ブルガリア政府は、補償金には応じられないが感染した子供たちを救済する基金の設立をすることを提案している。また、今年に入りEUの各国が感染者の養育や基金の援助を申し出ている。(ブルガリアは今年からEUのメンバーとなった)
・しかしリビア政府はこれを受け入れず、あくまでも1家族あたり15億円の補償、もしくは拘留者の死刑を求めている。

 その他では、政治的な背景として、リビアは長年の孤立から欧米に歩みよろうとしていたところ、この事件が起こり友好関係の構築が滞っている、という問題があります。

 4月26日のロイターヘルスによりますと、拘留されている5人のブルガリア人看護師と1人のパレスチナ人医師が、早ければ6月中に釈放される可能性がでてきました。

 これはブルガリア在住のドイツ大使が地元のマスコミに伝えたもので、EUとトリポリ(院内感染のあった病院のあるリビアの都市)との話し合いでその可能性が濃厚になってきているようです。

 しかし手放しで喜ぶわけにもいかないようです。ドイツの関係者は次のように話しています。

 「彼女たちが釈放される可能性が大きくなったが、釈放の条件については現在も話し合いがおこなわれている」

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 感染した子供をもつ両親の立場に立てば院内感染に対して許しがたい憤りを感じます。しかし、明らかに不当逮捕されている外国人の母国の政府に15億円もの大金を要求するのは筋が通りません。

 まずは真実を明らかにすることが先決です。その上で被害者に対してみんなが支援をするのが最善の方法です。感染した子供たちの支援を申し出ているのはEU諸国だけではありません。アメリカも名乗りを上げています。

 日本政府は何のコメントも発していませんが・・・

(谷口 恭)