HIV/AIDS関連情報

2007年4月17日(火) タイ政府、アボット社と折り合えず

 広く使われている抗HIV薬にカレトラというものがあり、これを製造しているのが米国のアボット社です。以前からタイ政府は、カレトラの値下げをアボット社と交渉してきました。4月12日のロイター通信によりますと、アボット社はカレトラの値下げに同意したものの、値下げ幅はわずかであり政府が満足できるものではない、とタイのモンコル保健大臣が発表しました。

 「強制実施権の行使だけが、我々がアボット社の者と座って話ができる唯一の方法である。我々はタイ国民がカレトラを容易に入手できるようになるまでアボット社と話をおこなうつもりだ」、モンコル保健大臣はロイター通信の取材にそのように答えています。

 2月にはメルク社がEfavirenzという抗HIV薬を46%値下げすることを発展途上国に対して発表しました。

 メルク社、アボット社の値下げ申し入れを受けましたが、結局タイ政府は昨年11月に発表した強制実施権の撤回をおこなう予定はないようです。

 タイ保健省の幹部であるヴィーチャイ・チョケヴィヴァット(Vichai Chokevivat)氏は次のように話しています。

 「製薬会社が薬剤費の研究開発費を理由に高い値段を設定するのは間違っている。薬はインスタントラーメンとは違い、利益を上げればいいというものではない。我々は大勢の人々に薬がいきわたるように製薬会社に利益の幅を下げてほしいのだ」

 あるタイのエイズ活動家は、アボット社は患者ひとりがカレトラを購入する価格が年間千ドル程度にすべきと主張しています。

 カレトラが高いと主張するのはタイだけではありません。北京のエイズ活動家Meng Lin氏は、次のようにコメントしています。

 「アボット社はカレトラの値下げをおこなったが、依然として中国人が買えるような価格ではない。中国人の月収は、せいぜい月に300から400元(約5千円~6千円)だ。人々は食べなければならない。現時点のカレトラの価格であれば購入できる中国人はほとんどいない」

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 せっかく作った薬剤が、価格が高いという理由で必要な人々に行き渡らなければ、製薬会社の社員もやりがいをなくしてしまうと思うのですが、一方で、あまり値下げをしすぎると会社の存続が不安定になるのかもしれません。

 誰がお金を出すかは別にして、結局のところ、世界中でHIV/AIDSの問題に取り組むための資金が不足しすぎていることが問題です。この問題を解決するには、エイズの実態を多くの方に知ってもらうのもひとつの方法でしょう。苦しんでいる人たちの力になりたいと考える人がたくさん登場することに期待したいものです。

(谷口 恭)