HIV/AIDS関連情報

2007年2月23日(金) ミャンマーのヘロインがタイに大量に流入

 クーデターで政治生命を絶たれたタクシン元首相がおこなった政策に「違法薬物撲滅政策」があります。当時「ドラッグ天国」と呼ばれていたタイ国をクリーンな国家にするため、「疑わしきは殺せ」という方針で、少しでも違法薬物に関与していることが疑われた者は容赦なく殺されていました。その総数は公式発表では約2,500人ですが、一説には5,000人を超える者が射殺されたのではないかとも言われています。

 実際、明らかな冤罪が次々と明るみになり、現在薬物容疑で射殺された事件の捜査をやり直すような方向で議論がおこなわれています。このため、ONCB(麻薬管理委員会)は、完全な証拠がなければ容疑者を逮捕できなくなり、その結果、麻薬取締りに大変難航しています。

 一方、中国では急増するHIV感染を防ぐために、自国に流入する違法薬物を徹底して排除する対策をとっています。

 タイでは麻薬対策が軟化せざるを得ず、中国では対策が強化されたことにより、ミャンマー産の高品質な薬物は、大量にタイに流入しつつあります。

 2月10日のバンコクポストによりますと、シャン族(ミャンマーの反体制派)のリーダーが、タイ政府に対して、ミャンマーの薬物密売人たちが国際マーケットに密売するためにタイに集中して密輸をおこなっているということをタイ政府に警告しました。

 シャン族によりますと、昨年は阿片の栽培に適した気候となったこともあり、栽培面積は減ったものの高品質なヘロインがつくられ価格は過去10年で最高値をつけているそうです。阿片10キログラムからヘロイン1キログラムが精製され、ヘロイン1.6キログラムが23万から25万バーツ(70万から75万円)で取引されているそうです。

 また、最近の特徴として、麻薬精製工場のほとんどで、麻薬と共にメタンフェタミンの結晶(通称"アイス")をも精製しているようです。

 現在ONCBはタイ軍と協力してミャンマーからの薬物流入を防ごうとしていますが、それと同時に台湾や日本からの買い付け人の動向にも目を光らせているそうです。

 シャン族の軍隊もタイ政府をサポートし、密売人を逮捕するとタイ軍に身柄を引き渡しているようです。

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 タイでは覚醒剤はヤーバー(馬鹿の薬)と呼ばれ、簡単に入手できる違法薬物の代表でした。それが、最近ではより純度の高い"アイス"へと入れ替わり、さらにヘロインの流通量も増えています。

 最近は北朝鮮からの密輸が減少し、"アイス"の流通量が減るのではないかと日本では言われていましたが、それに代わってミャンマー→タイ→日本というルートが確立されようとしているのかもしれません。タクシン政権のように冤罪を出すのは避けなければなりませんが、密売の捜査は徹底的におこなってもらいたいものです。

(谷口 恭)