HIV/AIDS関連情報

2007年2月15日(木) 今、オーストトラリアが危ない

 オーストラリアは、一時はHIV減少に成功した国だと言われていましたが、最近の状態は"最悪"と言っても過言ではないと思われます。

 2月9日のBBC NEWSによりますと、同国ではHIVの感染率が2000年から2005年で41%も上昇しています。

 2005年、オーストラリアでは950人のHIV陽性者が新たに発見されました。そのうちおよそ8割が男性同性愛者で、異性愛者は18%です。以前は感染者の占める割合が多かったIDU(薬物を静脈注射する人)は、針の無料交換制度が功を奏したため1%にまで減少しています。

 この数字から分かるように、オーストラリアで最もハイリスクなグループはゲイ(男性同性愛者)です。90年代後半にはゲイの間での感染率はいったん減少傾向となりましたが、2000年以降は再び上昇に転じています。

 1984年にHIV陽性が判明し、現在最も長生きしている陽性者のひとりである男性(ゲイ)は言います。

 「新しい世代のゲイはHIVに無関心なんだよ。HIVは死なない病気になったからね」

 たしかに、HIVは以前のように"死に至る病"ではなくなり、慢性的な疾患のひとつとなっています。しかし、"死なない病気"になったが故に、人々の関心が薄くなったというのはなんとも皮肉な結果です。

 ところで、オーストラリアのゲイコミュニティのHIV感染には興味深い特徴があります。ヴィクトリア州、クイーンズランド州では新たにHIVに感染するゲイが急増しているのにもかかわらず、ニューサウスウエールズ州では減少しているのです。メルボルン(ヴィクトリア州の州都)では急増し、シドニー(ニューサウスウエールズ州の州都)では減少しているというのです。この現象が不思議なのは、シドニーはオーストラリアでゲイが最も多い都市と言われているからです。

 この理由については正確なことは分かりませんが、あるエイズ関係者は、「シドニーのチャリティ団体や州の取り組みの成果ではないか」とみているようです。

(谷口 恭)