HIV/AIDS関連情報

2007年1月9日(火) 英国のHIV陽性者に対する差別

 イギリスでもHIV感染は増加していますが、「陽性者の多くが極度の貧困状態にある・・・」、そんな発表をふたつの関連機関(National Aids TrustとCrusaid基金)が共同でおこない、12月1日のBBC NEWSが報道しています。

 この発表をまとめてみましょう。

 ・HIV陽性者に対する増悪犯罪(hate crime)や差別が、陽性者を貧困に陥れ孤立させている。

 ・1986年にCrusaid基金が設立されて以来、HIV陽性者の3人に1人がこの基金を利用せざるを得ない状況である。過去4年間で、極度の貧困状態にあるために基金に応募しなければならない人が33%も上昇している。かなりの人数の人が収容施設を探している。

 ・2005年に基金に応募したHIV陽性者の週あたりの収入は60ポンド(約13,000円)しかなく、食料や衣類を求める者も増加している。

 National AIDS Trustの幹部デボラ・ジャック(Deborah Jack)氏は、「HIV陽性者の3人に1人が極めて貧困な状態にいることは大変ショッキングなことである」とコメントしています。ジャック氏は続けます。

 「貧困の原因は、政府の不適切な政策と社会にはびこる差別である。早急に対策をとってHIV陽性者の貧困を救わなければならない」

 これに対し政府は、「HIV陽性者に対して適切な支援がおこなわれている」、と反論しています。

 このBBC NEWSの記事では、ひとりのHIV陽性者のことが述べられています。彼女の名前はアリスと言います。

 アリスは気管支喘息をもっており、HIVが原因の足の痛みと体重減少があります。彼女の住居は貧困そのもので、ネズミが這い回り、じめじめしているため壁には黒カビがはえています。彼女は自分のその部屋に辿り着くために40段もの階段を上らなければなりません。彼女は5年前から家の修理を依頼していますが何もしてもらえないままです。

 アリスは言います。

 「慢性の病気をもっている者はゴミ捨て場に置いておいてかまわないってこの社会は思っているのよ」

 彼女は現在、Crusaid基金に、カビのはえたベッド、タオル、カーテンを交換してヒーターの電気代を払ってもらえるよう申請をしています。

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 このようなHIV陽性者に対する差別や貧困の様子は、アジアやアフリカの記事ではよく見かけますが、イギリスほどの先進国でもこのような貧困があることに驚かされます。日本にだって私たちが気付いていない悲惨な状況があるかもしれません。現在のGINAはタイ国の患者さんやエイズ孤児を中心に支援をおこなっていますが、自国の状況に目を向けることも忘れてはならないと考えています。 

(谷口 恭)