HIV/AIDS関連情報

2007年1月31日(水) インドネシアの薬物問題が深刻化

 インドネシアの薬物問題が深刻化しており、HIVの蔓延だけでなく、過激派や組織犯罪との関連性も懸念されることを、政府の薬物撲滅会議が1月23日に発表し、同日のロイターヘルスが報道しています。

 まずインドネシアの薬物事情についておさえておきたいと思います。2004年のデータでは、IDU(薬物を静脈注射する人)が57万2千人、そのうちの半数がHIV陽性、薬物に関連した原因で死亡した人は15,000人にものぼります。

 「我々は違法薬物の生産、密輸、濫用のいずれの問題にも直面している」

 同会議の議長であるパスティカ氏はそのようにコメントしています。パスティカ氏は現在32歳の警察官で、2002年のバリ島テロ事件の捜査官でもあります。氏は、イスラム過激派を非難し、次のように言います。

 「薬物の密輸とテロや国家間を超えた犯罪とは密接なつながりがある」

 パスティカ氏は、アチェ(スマトラ島の北端に位置する特別州)の独立を求める過激派の資金源がこの地域で大量に栽培されているマリファナであることを明らかにしました。

 アチェの過激派とインドネシア政府は2005年に平和協定を結び、政府は300ヘクタールのマリファナ畑を壊滅させ、代わりに農産物を栽培する計画が立てられています。しかし、アチェ内にはまだ500ヘクタールのマリファナ畑がある、と氏は言います。

 マリファナだけではありません。パスティカ氏によりますと、インドネシアではヘロインやエクスタシー(MDMA)、メタンフェタミン(覚醒剤)などの常用者が急増しているそうです。インドネシアは、以前は違法薬物の中継点に過ぎませんでしたが、最近では生産拠点にもなっています。そして、違法薬物の生産量が増えただけではなく、その質も向上してきており、なかでも最も深刻なのがメタンフェタミンであるそうです。

 2005年にはバンテン(ジャカルタの西に位置する州)の生産工場が警察に発見されました。この工場では、1週間に100万錠のエクスタシーを含む様々な違法薬物の生産能力があることが分かりました。これは年間6億ドル(720億円)に相当するそうです。

 インドネシアの特徴は面積が広いということよりもむしろ、1万以上もの島からなる国家ということです。そのため、密輸が比較的容易で、違法薬物の利益性を考えると今後も増加していくことが予想されます。

 インドネシアでは5000ルピア(約55セント、約66円)でエクスタシー1錠が産生でき、ジャカルタなど大都市のクラブでは、1錠10万ルピア(約11ドル、1,300円)で販売されているそうです。

*********

 このロイターヘルスの記事によりますと、インドネシアではメタンフェタミン(覚醒剤)のことを"シャブ"と呼ぶそうです。もしかすると日本人がこの国に覚醒剤を普及させたのでしょうか・・・

(谷口 恭)