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2007年1月30日(火) トリコモナスと人間の遺伝子はほとんど同じ?!

 女性器に痒みと悪臭をもたらす原虫のトリコモナスの遺伝子は人間のものとほとんど同じである・・・。

こんな研究がニューヨーク大学医学部によって報告され、1月11日のロイター通信が報道しています。

 研究者によりますと、トリコモナスは他の原虫と異なり例外的にたくさんの遺伝子を持っていることが判り、遺伝子の数がおよそ26,000にも及ぶとしています。これは人間の遺伝子の数とほぼ同じであると考えられています。

 研究者は、なぜトリコモナスと人間の遺伝子が似ているかについては分からないとしながら、遺伝子が似ていることと人間に感染しやすいことに何らかの関係があるかもしれないと考えているようです。

 この遺伝子の研究でいくつかのことが分かりました。まず、トリコモナスは自らアミノ酸のひとつであるシステインを合成することができるようです。これが原因のひとつとなり、腟内をアルカリ性にすると考えられています。正常の腟内は酸性ですから、アルカリに傾くと防御機能が弱められ、この結果(性)感染症に罹患しやすくなることが予想されます。

 また、トリコモナスが産生するいくつかの蛋白質が腟壁に損傷を与える可能性が示唆されています。さらに、トリコモナスが水素や他のガスを産生することも分かり、これが悪臭の原因になっていると考えられています。

 トリコモナスは世界全体でみれば、少なくとも1億7千万人の女性に感染していると推定されています。妊婦に感染すると早産や未熟児の原因となります。また、トリコモナスに感染すると腟内に炎症が生じるため、HIVや梅毒、淋病といった他の病原体にも感染しやすくなります。

 今回報告をおこなった研究者らによると、トリコモナスは感染してから数年間は無自覚のままで、ある日突然痒みや悪臭といった症状をもたらす、としています。また、トリコモナスは男性に感染しても無症状か、症状があったとしてもペニスに軽度の痒みを感じるのみです。

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 トリコモナスは女性に感染すれば数年間は無症状、男性に感染しても軽い痒みだけなら、積極的に検査をおこなうべきということになります。これまで、強い症状が出るまでは検査や治療の対象とならなかった性感染症ですが、今後対策が変わっていくかもしれません。

(谷口 恭)