HIV/AIDS関連情報

2007年1月11日(木) 東京の病院でHIV陽性夫婦が体外受精実施

 夫婦のどちらかがHIV陽性であっても、生まれてくる子供に感染させないようにする技術はかなり進歩してきています。しかしながら、夫婦のどちらもHIV陽性であるケースの出産はこれまで世界中でも試みがありませんでした。

 これを世界で初めておこなおうとしているのが東京の荻窪病院です。

 1月10日の毎日新聞によりますと、同院は9日、夫も妻もHIV陽性である2組のカップルに対し、精液からHIVウイルスを除去して人工授精または体外受精をおこなうことを院内の倫理委員会で承認しました。

 一組の夫婦は関東地方在住の30代の夫婦で、2人とも血液製剤によって感染したそうです。夫に増殖能力の強いタイプのHIVが増えており、妻にこのタイプが重ねて感染すると免疫力が急激に落ちる可能性があります。

 もう一組は東海地方の20代夫婦で、夫が血液製剤によって感染し、妻にも感染したそうです。夫のHIVは薬剤耐性を持っており、妻への重感染を防ぐためにも体外受精が必要と診断されたようです。

 精子からHIVを取り除き、事前に母側のウイルスの感染力を抑える措置を施し、陣痛開始前に帝王切開するなどといったことをおこなえば、子供への感染率は0.6%以下に抑えられると考えられています。

 同院では、これまでに、夫が感染者の夫婦55組に人工授精などを行い、37人の子供が生まれたほか、現在も5組が妊娠中で、妻や子に感染した例はこれまでないようです。 

(谷口 恭)