HIV/AIDS関連情報

2006年9月9日(土) ウガンダの同性愛差別

 ニューヨークに本部を置くHuman Rights WatchというNGOが、同組織の情報配信媒体であるHuman Rights News(9月8日号)を通して、ウガンダの同性愛差別に関する詳しい情報を発表しましたのでここに報告します。

 イギリスの統治にあった頃に制定され現在も継続している同性愛禁止法により、ウガンダでは同性愛行為は犯罪とされています。刑法140条では、同性愛行為をおこなった場合、「自然摂理に反した交接」として最低でも終身刑が科せられます。141条では同性愛行為を試みようとしただけで最低7年間の禁固刑となっています。
 
 
ヨウェリ・ムセベニ大統領の統治下で、ウガンダの同性愛者たちは長年の間不当な扱いを受けてきました。

 今年の8月8日、Red Pepperという名のウガンダのタブロイド紙が、45人の男性同性愛者の個人情報を公開しました。同紙は、「不道徳な同性愛が社会にいかに急速に広まっているかを示すために公開した」と述べ、レズビアンについても同様の発表をおこなう予定をしています。

 レズビアンの公開に対し、ウガンダのある活動家は指摘します。

 「国連の2000年のデータでは、ウガンダの女性の41%が家庭内暴力を受けていると報告されている。家長制度がはびこるこんな国では、レズビアンであることが分かると、家庭内や社会で暴力を受けることになるのは明らかだ」

 同タブロイド紙は、2002年に女性どうしで(非合法的に)結婚したカップルを写真入りで報道しました。警察は直ちにそのふたりの女性の尋問をおこないました。弁護士が介入しふたりは開放されましたが、再び逮捕され数日間抑留されることになりました。このふたりから相談を受けた牧師は逮捕され国外に追放されました。

 もう少しウガンダの同性愛差別についてみてみましょう。

 2004年10月には、情報大臣が警察に対し、Makerere大学で結成されたゲイの団体を取り締まるよう命じています。

 2005年6月6日、政府管轄のNew Visionという新聞は、「警察は同性愛者の家宅捜査をおこない逮捕すべきだ」、とコメントしました。同時に、政府関連の別の機関は、不道徳なウェブサイト、雑誌、新聞、テレビ局を追放すべきだと主張し、その対象にポルノと共に同性愛をあげています。その後、地方当局は、Sexual Minorities Ugandaという機関の代表をつとめるレズビアンの活動家を家宅捜査し、書類などを差し押さえ逮捕しました。また、別のレズビアンの活動家も逮捕し抑留しました。

 政府は同性愛者の権利や生活について話をすることを禁止しています。政府管轄の放送委員会は、レズビアンとゲイが出演したトークショーを放送したラジオ局に対して、約12万円の罰金を言い渡しました。

 2005年2月に、アメリカ人のEve Ensler原作の「腟の独白(The Vagina Monologues)」というタイトルの演劇が政府の検閲により禁止されました。同性愛や売春といった非合法で自然に反する行為を助長する恐れがある、という理由です。

 ところで、ウガンダがとっているエイズ対策は「結婚まで貞操を守る」というものです。

 2005年3月のHuman Right Watchのレポートは、「この対策は、若い世代に正確な情報を知らせないことにつながり、本質的な性差別をもたらしている」、と指摘しています。結婚までの禁欲は、法的に結婚できない同性愛者の存在を否定することになるからです。

 2002年3月は、国家のHIV/AIDS対策は評価されましたが、そのとき大統領は、「ウガンダでは同性愛を認めない」、とコメントしています。

 Human Rights Watchのスタッフは言います。

 「ウガンダのいったん成功したかにみえるエイズ予防対策はすでに破綻しつつある。なぜなら脆弱な人々が地下に潜ることになっているからだ」

 Human Right Watchは、政府に対し次のことを要求しています。

 ・同性愛者を差別する政策を直ちに中止する
 ・同性愛禁止法を撤廃する
 ・同性愛者を擁護している人権擁護者に対する暴力や不当な扱いをやめる

 尚、UNAIDSのデータでは、ウガンダのHIV陽性者はおよそ100万人で、国民のおよそ6.7%に相当します。

(谷口 恭)