HIV/AIDS関連情報

2006年9月6日(水) ミャンマー難民はタイで治療を受けられるか

 9月4日のRelief Webによりますと、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が、タクシン首相に、「ミャンマーからの難民を国のエイズプログラムの対象に加えるべきだ」と勧告したようです。(Relief Webのwebsiteでは、この情報はIRINからとなっているのですが、なぜかIRINのwebsiteには掲載されていません。IRINとは国連関連の情報配信機関です)

 ミャンマーでは、ビルマ族と少数民族の紛争が1949年以来現在も続いていますが、1984年頃からミャンマー難民として主にカレン族(Karen)と赤カレン族(Karennis)の人々がタイに流入してきたという経緯があります。UNHCRの報告では、現在タイとミャンマーの国境近くに9つの難民キャンプがあり、約14万人の人々が生活をしています。

 UNHCRが2つの難民キャンプで妊婦のHIV抗体検査を実施したところ、陽性率は0.3%以下だったそうです。タイ全体でのHIV陽性率が1.4%ですから、難民キャンプ内ではHIVがそれほど蔓延していないということになります。

 しかしながら、ミャンマー難民のなかで現在抗HIV薬の支給をNPOなどから受けているのは63人だけであり、実際に必要な人々は100から175人にのぼる、とUNHCRは試算しています。これらの人々が、NPOからではなく政府によって治療を受けられるようにすべきだ、とUNHCRは首相に勧告したようです。

 タクシン首相は、本年1月に一族がオーナーを務めるシンコーポレーションの保有株式をシンガポール政府系の投資会社に売却し課税逃れをしようとしたことから支持率が急落し、最近では暗殺計画まで報道されています。しかし、現在でもタイ北部や東北部では絶大な人気をほこっています。その理由のひとつに、貧富の差を軽減させたことが挙げられます。そういう意味では、今回のUNHCRの勧告を聞き入れて、タイ国籍のないミャンマー難民もタイ国民と同様の治療が受けられるようになるかもしれません。

 国連内の一組織であるUNHCRは、難民を救うことを目的として設立された組織ですが、同じく国連内の組織であるUNAIDSは、2006年の報告で、「タイの若い世代の85%がHIVに無関心である」という自体に警告を発しています。

 タクシン首相には、難民の支援と同時に、HIVの予防啓発にも力を注いでもらいたいものです。

(谷口 恭)