HIV/AIDS関連情報

2006年9月22日(金) HPV感染が妊娠を妨げる可能性

 いわゆる"イボ"の原因ウイルスと子宮頚癌をきたすウイルスは同じ仲間でHPV(ヒトパピローマウイルス)と呼ばれています。性感染症のひとつである尖圭コンジローマもHPVが原因です。(HPVワクチンの記事については2006年8月30日「オーストラリア、子宮頚癌のワクチン無料接種」参照)

 「HPVが妊娠を妨げる可能性がある」

 そんな発表をアメリカの研究者が9月19日におこないました。

 同日のロイター通信にこのニュースが報道されていますのでお伝えします。

 研究者によりますと、体外受精で妊娠を試みた女性のうち、HPVに感染していない場合の妊娠成功率が57%だったのに対し、HPV陽性者の成功率はわずか23%しかなかったそうです。このデータは「Fertility and Sterility」という医学誌に発表される予定です。

 研究者のひとりでもある、アメリカ生殖医療学会(American Society for Reproductive Medicine)会長のJoseph Sanfilippo医師は、「HPVは妊娠を希望する世代の女性の多くが有している。今後、人工授精を希望する女性全員に対してHPVの検査をおこない、妊娠の可能性について医師が話をすることになるだろう」、とコメントしています。すでに現在も施設によっては人工授精の希望者全員に、HIV、クラミジア、淋病に加え、HPVの検査をおこなっているそうです。

 米国CDC(疾病対策局)によれば、アメリカだけでおよそ2千万人がHPVに感染しています。性行為をおこなうすべての人の少なくとも50%は生涯どこかで感染しているとみられています。これは毎年新たに620万人が感染しているということになります。

 HPVは子宮頚癌の原因ウイルスです。世界中で毎年およそ30万人がこの癌で命を失っています。アメリカだけでみても毎年4千人が亡くなっています。

 現在の日本では人工授精希望の女性がおこなう検査は、HIV、クラミジア、淋病といったものだけであり、HPVまで全員におこなっている施設は(私の知る限り)ありません。今後日本も同じような動きになるかもしれません。

(谷口 恭)