HIV/AIDS関連情報

2006年9月22日(金) 全米でHIV検査が義務付けられる可能性

 一度も"デート"したことのない10代、30年間夫にだけ貞操を守ってきた女性、性交渉を持たない聖職者、などに該当しない13歳から64歳のアメリカに居住する人は、HIV検査を定期的に受けなければならない・・・。

 9月21日に米国CDC(疾病対策局)が発表したこの通達が、世界中のメディアで報道されています。

 CDCによると、HIVに感染していることに気付いていない人は全米でおよそ25万人もいるそうです。

 現在米国では、薬物常用者や売春婦といった「ハイリスク・グループ」に属する人のみにHIV検査をすすめています。自身の感染に気付いていない人があまりにも大勢いる現状を考慮して今回の通達が決定されたというわけです。

 現在米国にはおよそ100万人のHIV陽性者がいて、毎年4万人の新規感染が報告されています。

 9月21日のロイター通信に、モンテフィオーリ医療センター(Montefiore Medical Center)の青少年エイズプログラム(Adolescent AIDS Program)の幹部であるDonna Futterman医師のコメントが載せられています。

 「男性と性交渉を持つ若い男性のおよそ80%が、いつHIVに感染したのかわかっていない、というデータがある」

 同日のAP通信では、この通達に対する問題点が指摘されています。問題点は主に3つあります。ひとつはお金がかかるということ、ふたつめは検査の前に必要なカウンセリングをどのようにおこなうかという問題です。時間がかかりますし、人材の問題もあるでしょう。

 そして3つめが、すべての医師がこの通達に従うわけではない、ということです。実際、ハイリスク・グループ以外にまでHIV検査をすることの効果を疑問視する医師もいるそうです。

 この通達は米国医師会の承認を得ていますが、どれくらいの医師がこの通達に従うかは予想できない、とCDCはコメントしています。

 日本にはこのような動きはありませんが、今後の動向に注目したいところです。

 最後に、ロイター通信に掲載された、CDC幹部のBernard Branson医師のコメントを紹介しておきましょう。

 「どの患者さんがHIVに感染している可能性があるかを医師が察するのは必ずしも容易ではない。ときに患者さんは、自分の薬物使用やアナルセックスなどを医師に話すのに躊躇する。そして若者が若者から感染しているケースが増えている」

 私は日本の医師としてまったく同じことを感じています。

(谷口 恭)