HIV/AIDS関連情報

2006年9月21日(木) 不良外国人追い出し作戦の弊害

 タイでは10月1日より入国条件が大きく改正され長期滞在が厳しくなります。この情報はタイ関連のメディアが先週あたりから一斉に報じていますが、9月18日のバンコク週報にイミグレーションの局長の興味深いコメントが掲載されています。

 イミグレーションのスワット局長は「観光は30日で十分」と述べ、次のようなコメントを発しているそうです。

 「本当の旅行者に(タイに)来てほしい。30日毎に出入国を繰り返し、安上がりな生活を送っている外国人はいらない」

 現在ビザのない入国は30日以内とされているため、30日毎にいったんカンボジアやマレーシアといった隣国に出国し、1日か2日(ひどい場合は数時間、もっとひどい場合は数分)のみ隣国に滞在して、再びタイに戻るという方法をとる外国人がかなり大勢います。バンコク週報によりますと、パタヤに住みながら、30日の滞在許可更新のため、国境に向かう外国人は1日300人ほどいるそうです。

 スワット局長は次のようにも述べているそうです。

 「タイにいたいがためだけに、タイ人と結婚している外国人へのビザ発給も見直す。外国人とタイ人のカップルが1月4万バーツ以下で暮らすのは現実的ではない」

 後半の「月4万バーツ(約12万円)以下で暮らすのは現実的ではない」、というのがよく分かりませんが(私は充分に暮らせると思うのですが・・・)、実際、タイにいたいがためにタイ人と結婚している外国人は少なくないそうです。

 ここで、改正後のルールについてまとめておきましょう。

 まず30日以内の観光であれば従来となんら変わりありません。いったん隣国に出て再びタイに戻る方法が、今後どの程度まで許されるのかは分かりませんが、「6ヶ月以内の合計滞在日数が90日以内」というルールが厳格に適用されるようです。

 もっとも、これはビザなしの場合で、観光ビザを取得すれば何の問題もありません。ただ、タイに長期滞在している者のなかには、定職についておらず(長期滞在しているのですから当たり前ですが・・・)、また、タイ滞在にきちんとした目的がないことが多いため、在職証明書などのビザ取得に必要な書類が取れないことも多く、観光ビザの取得は困難な人も多いと思われます。

 日本人も含めて、タイに特にあてもなく長期滞在している外国人のなかには、素行のよくないいわゆる「不良外国人」が少なくありません。そして、薬物や買春といった犯罪に手をそめていく者もなかにはいます。

 今回の法改正がそういった「不良外国人」の排斥につながるならそれは歓迎されるべきことでしょう。

 しかしながら弊害があることは否めません。その弊害は少なくとも2つあります。

 ひとつは、「安上がりな生活を送っている外国人はいらない」、とイミグレーションの局長はコメントしているようですが、品行方正に安く暮らしている外国人だって大勢いるということです。外国人の入国についてはタイ政府が決めることですから、外国人が意見を言う権利がないのは分かりますし、大量のドルや円を落としていくからこそ旅行者を積極的に受け入れるという国の政策は理解できますが、素晴らしい自然と絶品の料理が味わえるタイという国の魅力を外国人にも分け与えてほしい・・・と私は感じています。

 世界にも類を見ないほどの閉鎖的な入国システムをとっている日本の国籍を持つ私がこのようなことを言っても説得力がないでしょうが、日本の厳しい社会に疲れ、タイで人間らしさを取り戻した日本人を私は何人か知っています。彼らがタイから追い出されることになれば、いったいどこに行けばいいのでしょうか・・・。

 もうひとつの問題は、タイで働いている大勢の外国人ボランティアの行方です。彼(女)らの大半はビザなしで入国し、パタヤの不良外国人と同じように30日ごとに国境越えをしています。彼(女)らが、タイに滞在できなくなると、彼(女)らがケアしている困窮している人々はどうなるのでしょうか。

 今回の法改正は、あまりにも目立つ不良外国人を排斥するためにはいいことだと思うのですが、タイ政府には、善良な外国人もいるということを分かってもらいたいと思います。

(谷口 恭)