HIV/AIDS関連情報

2006年9月17日(日) 日本の76%の施設がHIV陽性者受け入れず

 9月14日の中国新聞ニュース によりますと、HIVに感染した人が障害や慢性症状を抱え、療養病床や介護施設などで長期療養を希望しても、そういった施設の76%が「受け入れを考えていない」と門を閉ざしていることが14日、国立病院機構東京病院の永井英明・呼吸器科医長らの全国調査で分かりました。

 感染者が安心して医療や介護を受けられる社会とは程遠い現状です。

 調査は昨年9月から今年1月、療養病床のある病院と介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、重度障害者や難病患者らが入る「障害者施設等入院基本料」の基準取得病院(障害者病棟)を対象に実施。全国すべての対象施設に質問票を送り、全体の32%の約3700施設が回答しました。

 それによると、HIV陽性者の受け入れ基準を決めている施設は全体の2%と少なく、特別養護老人ホームと障害者病床の68%、介護老人保健施設の77%、療養病床の84%が「受け入れを考えていない」としました。

 受け入れない理由は「診療できる医師がいない」(68%)が最も多く「受け入れ経験がない」「エイズ知識が乏しい」「職員への感染リスク」などが続きました。医療保険を使う療養病床などでは、診療報酬上、検査料や治療費が定額となっており、高額なHIVの治療薬を使うと施設側の負担となるため「経営上受け入れ困難」との声もありました。

 実際にHIV陽性者から問い合わせを受けた施設は65カ所(2%)で、そのうち半数は「受け入れ経験がない」などの理由で断ったとのことです。

 HIV脳症などを発症した患者の中には、治療で免疫機能が安定しても脳障害などが残り、長期療養の必要な人が増えているといいます。

 永井医長は「HIV陽性者が高齢化すれば受け皿はもっと必要になります。施設職員の研修や治療費の支援、エイズ専門医との連携など、受け入れ体制を全国的に整える必要がある」と話しています。

 HIVと同じような感染経路をもつB型及びC型肝炎ウイルスについては、日本には数百万人の陽性者(キャリア)がいますが、こういったウイルスのキャリアはほとんどの施設で入所を拒否されていないはずです(ただし以前にはこういった疾患に対する差別があったのは事実です)。

 今回の調査で回答された「受け入れない理由」には上がっていませんが、「HIV陽性者を入所させれば施設のイメージが悪くなる」、というのも本音のひとつかもしれません。だとするならば、施設だけではなく、社会全体にスティグマがはびこっていることが問題といえるでしょう。

(浅居 雅彦)