HIV/AIDS関連情報

2006年9月13日 重慶の娯楽施設でコンドームを配布

 9月7日のChina Dailyによりますと、中国の重慶(Chongqing)内の売春がおこなわれている娯楽ビルに対し、コンドームの供給を義務付ける公的プロジェクトが開始されることになりました。

 このプロジェクトは、重慶のCDCと呼ばれる疾病管理局(Disease Control and Prevention Centre)によって施行されます。重慶内の5つの区域にある、ホテル、マッサージセンター、カラオケなどすべての娯楽施設でコンドームが供給されることになります。

 今年の6月までに重慶では2,222人のHIV患者が発見され、そのうち12.7%は性行為による感染です。重慶のJiulongpo 地区には少なくとも1000以上の娯楽施設がありますが、地方当局がこれらの施設を調査したところ、441の施設で売春行為がおこなわれていたそうです。

 このプロジェクトでは当局が施設の管理者に対する指導をおこないます。指導の後、管理者はコンドーム配布に関する規約に調印します。この規約では、コンドームを無料で、もしくは低価格で売春がおこなわれる各部屋に置かなければなりません。そして、当局はこの規約が守られているかどうかを調査し、もしも違反が見つかれば、警告、罰金、または営業停止にします。

 中国全土でみれば、2005年にHIV感染が新たに確認された7万人のうち、その半分が危険な性行為によるものでした。2004年に厚生省や公安省を含む6つの省が協同で国全体にコンドームを普及させるプログラムを実施しましたが、それが施行される前は、コンドームの使用を奨励するようなプログラムはほとんどありませんでした。

 尚、中国では売春は違法行為です。現在、警察はホテルや娯楽施設でコンドームを見つければ売春がおこなわれているとみなし逮捕しています。逮捕された売春婦と顧客は、平均15日間の抑留をされるか罰金刑が科せられることになります。施設の管理者も罰せられます。しかし、これまで警察がいくら捜査を強力にしても性産業の抑制に効果はありませんでした。実際、危険な性行為を通してのHIV感染は増加の一途をたどっています。

 今回の重慶のプロジェクトでは、コンドーム発見を逮捕の理由にしないようにCDCが警察に協力を求めています。今後このプログラムは国全域に広がるとみられています。

 ベトナムや中国など共産圏の国では、売春に対して厳しい刑が科せられるのが普通です。中国に売春ツアーに行く日本人もいるようですが、もしも警察に見つかれば逮捕は確実です。実際には売春のない国など存在しませんが、共産圏の国では売春の疑いがもたれれば、いかなる言い訳も通用しません。ダメなものはダメなのです。

 その中国で、今回のような現実的なプロジェクトが遂行されるようになったことに驚かされます。売春が非合法であることには変わりがありませんが、いくら法律を厳しくしてもなくならないという事実を見据えて、HIV蔓延の予防という目前にせまった問題に現実的に対処する姿勢は評価されるべきでしょう。

(谷口 恭)