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2006年8月27日(日) カリフォルニアの刑務所でコンドーム配布の法案

 8月24日付けのロイター通信によりますと、カリフォルニア州議会で、「州刑務所内でコンドームを配布する」という法案が可決されました。この法案は今後、州知事であるアーノルド・シュワルツネッガー氏に送られ、同氏が承認すれば施行されることになります。

 カリフォルニア州刑務所は全米で最大の規模をほこり、およそ16万2千人が収容されており、その大半は男性です。刑務所内でのHIV感染率は、ロサンゼルス全般の感染率のおよそ8倍にもなるそうです。

 刑務所内での性交渉など、もちろん公的には禁止されているでしょうが、実際にはおこなわれているという現実があるのでしょう。しかし、だからと言ってコンドームを配布するようなことをおこなえば、刑務所自体が施設内での性交渉を認めてしまうことになってしまいます。にもかかわらず、現実的な観点からコンドームを配布することを決断したのは、さすがアメリカ合衆国という感じがします。

 米国では、90年代前半、静脈注射で違法薬物を摂取する人たちの間でHIV感染の増加が止まらないという現実がありました。そこで米国のとった方策は、薬物中毒者たちに対する無料での注射針配布だったのです。

 薬物中毒者への注射針にしても、刑務所内でのコンドームにしても、当然反対意見はあるでしょうが、現実を適切に認識し、効果的な対策をとることのできるこの国は評価されるべきだと思います。

 注射針やコンドームどころか、学校での適切な性教育ですらおこなえないわが国とは大きな違いがあると言えるでしょう。

(谷口 恭)