HIV/AIDS関連情報

2006年12月3日(日) 懲役を求刑されたHIV陽性者の言い訳

 これまでも何度かこのコーナーでお伝えしているように、自身がHIV陽性であることを知りながらコンドームを用いない性交渉(unprotected sex)をおこなえば有罪判決を受ける事例が世界的に増えてきています。たとえ、相手がHIVに感染しなくとも、です。

 最近、米国カンサス州で、3人の女性に対し、コンドームを用いない性交渉をおこなった30歳のHIV陽性の男性が32ヶ月の禁固刑を求刑されるという事例があり、11月24日のCNN.COMが報道しています。

 この男性は、これら女性と危険な性行為をもったことは認めているものの、32ヶ月の禁固刑は重過ぎると主張しています。

 この男性は、性関係をもった3人の女性に対し、「自身はheart(心臓)の状態が原因で健康上の問題を抱えている」と話していたそうです。

 これにはトリックがあります。現在のエイズ治療は複数の抗HIV薬を組み合わせて内服することによっておこなわれますが、これをHAART療法といいます。HAARTとは、"Highly Active Anti-Retroviral Therapy"の略で、HAARTの発音は心臓のheartと同じです。

 そのため、この男性は、「女性たちに対し、HAARTの状態が原因で健康上の問題を抱えている、とあらかじめ話していた。(だから自身がHIV陽性であることを偽って性行為を持ったわけではない。HAARTをエイズ治療でなく心臓のことと考えたのは彼女たちの思い違いだ)」、という言い訳をしているそうです。

 もちろん、このような見苦しい言い訳が通用するはずはなく、陪審員たちをあきれさせただけとなったようです。

 この男性の弁護士は、3人の女性はHIVに感染していないことと、彼女たちにも危険な性行為をおこなった幾分かの責任はあることを主張し、減刑を求めていくようです。

(谷口 恭)