HIV/AIDS関連情報

2006年12月19日(火) 中国雲南省、HIV陽性を当局がパートナーに通知

 現在GINAが支援しているタイのパヤオ県では、あまりにも夫婦間のHIV感染が多いために、現在では結婚前のHIV検査が義務付けられています。

 これと一見似ているような試みが中国雲南省で始まります。12月2日のロイター通信によりますと、今年の1月以降にHIV感染が判った人の結果が、これから結婚する予定のパートナーに当局から通知されることになるようです。

 タイのパヤオ県と中国雲南省の試みは似ているようにみえますが、決定的に異なる点を見逃すことはできません。

 パヤオ県では検査に同意したカップルが、結婚前に保健所や病院を訪れてふたりで検査を受けます。カップルの間では、「結婚するにはHIV検査が必要だから一緒に受けにいこうね」、という会話がなされるでしょう。

 それに対し、雲南省の方式では、検査結果が本人の同意なく、自動的にパートナーに通知されることになります。

 カップルの間で、HIVの話を充分にした上でふたりで検査を受けに行くのと、本人の許可なく自動的にパートナーに通知がいくのとでは、その意味がまったく異なります。事前にHIVの話をしていれば、例えば、「どちらかが感染していても一緒になろうね」、といった話にもなるでしょうが、突然何の予告もなく「あなたの結婚相手はHIV陽性です」という通知が届けば、同じHIV感染でも受け止め方が大きく異なるでしょう。

 いずれ、日本でもこのような試みがおこなわれるようになるかもしれません。私は『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』でも指摘していますが、すべてのカップルは交際を始めたときにHIVや他の性感染症の話をおこない、必要であれば検査を一緒に受けに行くべきだと考えています。

 尚、参考までに当局が発表している雲南省のHIV陽性者は47、314人で、中国全体では183,733人(2006年10月末現在)ですから、およそ4分の1が雲南省ということになります。この割合はともかく、UNAIDSの試算では中国全土で65万人、さらにその何倍にもなるという関係者も少なくありません。

(谷口 恭)