HIV/AIDS関連情報

2006年10月19日(木) 中国、イギリス合同エイズプロジェクトの成果

 中国の商務省(Ministry of Commerce)とイギリス国際開発庁(British Department for International Development)が共同で2000年からおこなっていたエイズ予防プロジェクトが今月10日に終了しました。

 このプロジェクトの成果について、10月12日のCRIENGLISH.COMが報道していますのでここにご紹介いたします。

 このプロジェクトは中国南西部に位置する四川省と雲南省の37の都市のなかの83区域でおこなわれました。CRIENGLISH.COMによると、少なくとも4,500人のHIV陽性者の治療がおこなわれ、プロジェクトの予防によって13万人がHIVに感染するのを防ぐことができたと試算されています。

 プロジェクトの対象になったのは、薬物中毒者、売春婦など、HIVに感染するリスクが高いと考えられている人たちが中心です。

 薬物の静脈注射に対しては、注射器の無料配布が徹底されました。1,990万ポンド(約44億円)が投入され、128万本の注射器の配布、114万本の注射針の回収がおこなわれました。この結果、2002年の同プロジェクトの調査では、四川省、雲南省とも中毒者の半数が注射器の共用をしていたのに対し、最終的には四川省、雲南省でそれぞれ80%、86%の中毒者が共用しなくなったそうです。

 売春婦に対しては、プロジェクトのボランティアが売春婦にコンドームの使用を指導しました。この結果、四川省、雲南省の売春婦のそれぞれ53%、80%がコンドームを使用するようになったそうです。

 また、このプロジェクトでは、地域にはびこる差別に対する対策も打ち立てました。

 四川省の内陸に位置し132万人の人口を抱えるZizhongでは、1995年に違法の売血がおこなわれていましたが、地域の行政はこの問題に対して対策を講じることはありませんでした。この結果、109人がHIVに感染したと言われています。

 この売血によってHIVに感染したある男性は言います。

 「村の若いやつが僕をみるとタバコに火をつけるんだ。やつらはライターの火で風向きを確かめて、僕がいる方向から風が吹いてこないことを確認していたんだ」

 この男性は絶望のどん底にいましたが、2001年にこのプロジェクトのボランティアたちに勇気を与えられました。

 「ボランティアの人たちは、もう悩むのはやめてこれからはエイズの予防のために村人たちに正しい知識を一緒に啓発していこうって言ってくれたんだ」

 現在37歳のこの男性は、生まれ故郷で喫茶店を経営し材木の栽培をおこなっているそうです。

 「このプロジェクトが成功したのは、地域の行政やNGOなどの団体と協力し、草の根レベルで行動したことである」と、UNAIDS中国支部のスタッフはコメントしています。

 中国は2005年の時点で、75,000人のエイズ発症者を含む65万人がHIVに感染していると発表しています(ほとんどの専門家は実際の数字はこれよりも遥かに多いとみていますが)。ドラッグユーザーのなかで288,000人がHIV陽性であるとの報告もあります。

 ゴールデントライアングルに面している雲南省では、2005年の時点で40,157人のHIV陽性者が確認されています。四川省では、今年の6月までで7,647人のHIV陽性者が報告されています。

 イギリス国際開発庁は、これからも5年間にわたり合計3千万ポンド(約6,700億円)の資金協力をする予定だそうです。

(谷口 恭)