HIV/AIDS関連情報

2006年10月16日(月) ベトナムのエイズ事情 

 10月6日、WHOが現在のベトナムのエイズ事情についてのコメントを発表し、それを同日のCRIENGLISH.COMが報道していますのでここにご紹介いたします。

 現在ベトナムのHIV陽性者は、薬物の静脈注射をする人や売春婦の間に多いのが特徴で、そういった人たちから一般の人々への広がりが懸念されています。また、男性と性交渉をする男性(MSM)の実態については、現在充分に知られておらず今後調査していく必要性が指摘されています。

 もうひとつの大きな問題は抗HIV薬の普及です。現在ベトナムには35,000から36,000人の抗HIV薬が必要な人がいると言われていますが、実際に投薬を受けているのはこのうち10人に1人もいません。2008年には57,600人、2010年には73,000人が抗HIV薬を必要とするであろうと関係機関は試算しています。抗HIV薬が支給されていない最大の理由が、医療システムが確立されておらずHIVの治療をおこなえる施設が充分でないというものです。

 しかしながら、WHOによれば、現在のベトナム政府はHIV/AIDS問題に力を入れるようになってきており、HIV蔓延を防ぐ戦略の確立、HIV関連法の整備、関連機関の創設、スティグマや差別に対する対応などがかなり進展しているようです。

 ベトナムのHIV/AIDS対策の特徴は、諸外国で成功している方法を取り入れていることにあります。このなかにはメタドン療法(メタドンとはオピオイド系の合成鎮痛薬でヘロイン中毒者の治療に使われることがあります)、薬物中毒者に対する注射針の無料交換、コンドーム配布なども含まれます。

 UNAIDSのデータによると、ベトナムの2005年のHIV陽性者は約26万人で、これは1995年の12倍に相当します。人口は8,400万人、一人当たりのGDPは2,700ドル(約32万円)、成人の陽性率は0.5%です。2005年には13,000人がエイズで死亡しています。

 ベトナムは2010年までに成人の陽性率を0.3%以下にし、2020年までこれを維持することを目標としています。

(谷口 恭)