HIV/AIDS関連情報

2006年6月3日(土) 「誰もが治療を」 国連エイズ総会閉幕

 国連のエイズ総会がニューヨークで閉幕しました。

 産経新聞によりますと、「2010年までに、だれもが必要な予防・治療・ケアとサポートを受けられるように目指す」(ユニバーサル・アクセス)との目標を盛り込んだ新たな政治宣言を採択して閉幕しました。今後、この精神に基づいてエイズ対策が進められていきますが、資金や専門家らの人員確保など課題は山積みです。

 HIV感染者に対する治療や支援体制は先進国と途上国、国内でも都市と地方で大きな差があり、この差を解消し、必要な人が必要な各種支援を住んでいる地域にかかわらず受けられるようにすることがユニバーサル・アクセスの目標です。

 ユニバーサル・アクセスの実現については、10年までに「最大限努力する」との表現で合意に達しましたが、とりわけ資金面で難問が残っています。

 今回の宣言では、HIV感染者の増大で昨年の2倍以上にあたる年間200億ドル以上のエイズ対策が必要になるとしましたが、具体的な拠出方法や目標時期は示されておらず、「十分な資金がドナー国や国の予算から得られる措置をとる」との表現にとどまっており、ドナー国の具体的な拠出額などや期限には踏み込みませんでした。日米欧などのドナー国が負担の増加を懸念したためとみられます。

 また、予防計画などの対象になる「社会的弱者」の定義についても意見の対立がみられました。先進国の一部やNGOは同性愛者、薬物中毒者なども対象に含むよう求めたのですが、イスラム諸国や保守的なカトリック諸国の反対で、直接の言及は避けられました。

 NGO関係者らは「強い決意の感じられない漠然とした内容」「具体的な資金源への言及や目標達成に向けた締め切りもない」と失望感をあらわにし、宣言に盛られた対策の実効性に疑問符をつけました。

 「01年の特別総会後、旧ソ連や東欧を中心に薬物中毒者のHIV感染が爆発的に増えた。宣言はこうした現実を反映していない」との指摘もありました。

 エリアソン総会議長は閉幕の演説で「宣言を採択するのはやさしいが、これらを各国がすみやかに、目的意識をもって実行に移せるかどうかが問われている」と努力を促しました。

(浅居 雅彦)